小さな命からのおくりもの

「残念ですが、お腹の赤ちゃんの成長が止まっています。」

たしか、そう伝えられたと思います。

「え?」と聞き返すことが精一杯でした。

気づいたら涙がポロポロと次から次へとこぼれ落ちていました。

産婦人科の先生も隣にいた看護師の方も、困ったような顔をしていて、私は「泣くな。今ここでは泣くな。」と心の中で必死に自分に言い聞かせていました。

「妊娠初期にはよくあることで・・・」と説明が続きましたが、先生の言葉は私の耳に入ってきませんでした。

私は先生の口がパクパクと動いているのをただ見ているだけでした。

 

初めて授かった待望の赤ちゃんでした。

 

これからお腹も少しずつ大きくなっていくのだろう。

男の子かな、女の子かな。

どちらだとしても嬉しいなと思っていたのに、どうして。

 

流産になってしまった医学的な理由はきちんとあり、先生はそれを私に説明してくれていたはずなのですが、私が求めていたのはそのような答えではなかったのだと思います。

 

「どうして私なの?」という問いを拭い払うことができませんでした。

 

そして次に湧き上がってきたのは「私のせいだ」という自分を責める気持ちでした。

無理をして仕事をし過ぎていたのかもしれない。

もっと食事に気をつけるべきだったのかもしれない。

きっと私は何かを間違ったに違いない。

 

たくさんのお母さんたちが、赤ちゃんが生まれる準備ができるまで大切にお腹の中で赤ちゃんを守っているというのに私はそれができなかった。

 

ごめんなさい。

 

私をお母さんに選んでくれたのに、きちんとあなたを守ることができずにごめんなさい。

 

突然の悲しい別れは簡単に受け入れられるものではありませんでした。

お腹に宿ったばかりの小さな命でしたが、私にとってはすでにかけがえのない存在でした。

 

「またチャンスはあるよ。」という励ましの言葉をさまざまな方から頂きました。

その度に「でも・・・」という言葉を飲み込みました。

「そうだね、ありがとう。」

ウソの笑顔で答えました。

本当は心の中で「でも・・・、その子はこの子とはちがう子でしょう?」と答えていました。

 

それから必死になって、「空に帰った赤ちゃん」についてインターネットで調べ始めました。

冷たい悲しみと重くのしかかる自責の念を抱えながらも、まるで何もなかったかのように毎日仕事に行き、「普通の暮らし」をし続けなければいけないことに心が壊れそうだったからです。

 

赤ちゃんはどんな理由で雲の上に帰るとしても、自分だけのために帰っていくことは決してありません。

意味のない命はひとつもなく、赤ちゃんは残される人に大きなプレゼントを置いていってくれます。

赤ちゃんを亡くしたお母さんは、しばしば「人生にこんなつらいことがあるとは知らなかった」とおっしゃいます。

もっともなことだと思います。

けれど、赤ちゃんは、お母さんの笑顔を見るためにやってくるのであり、お母さんを傷つけるためではありません。

母親として最大の悲しみを経験し、きちんと受けとめたお母さんは、いたみの深さだけ優しくなり、人としての深みが増すでしょう。

そしてそれこそが、赤ちゃんがお母さんにさしだしたいプレゼントなのだと思います。*①

赤ちゃんは空の上からお母さんを選んでくると言います。

無事に生まれてくる子もいれば、生まれる前に空に帰る選択をする子もいます。

それでもどの赤ちゃんもお母さんのことが大好きで、伝えたいメッセージと贈り物を持ってお母さんのお腹に宿ると産婦人科医の池川先生は語ります。

 

大切な人との死別は、誰にとっても簡単には受け入れられるものではありません。深い悲しみから立ち直るには、多くの時間と適切なグリーフケアが必要になります。

グリーフリリーフは死別の悲しみを乗り越えることを助けてくれるエッセンスです。

スターオブベツレヘムは、悲しみから立ち直るために心の傷を癒すサポートとして働いてくれます。

レッドスヴァフランジパニは、愛する人との死別というつらく激しい悲しみや痛みを経験したあとの心が引き裂かれるような状態を助けてくれるエッセンスです。

 

あれから何年も経ち、出口がないような悲しみから立ち直ることはできました。

それでもあの子のことを忘れた日は一日もありません。

「無事に生まれていたら今頃は○○歳だったんだな」と考えてしまう日もあります。

きっとどれだけ時間が経ったとしても、どんなに悲しみから立ち直ったとしても、あの子との記憶とあの子が私に届けてくれた愛や贈り物を、私はいつまでも大切に心の中に持ち続けるのだと思います。

 


※レッドスヴァフランジパニはお取り寄せ商品になります。ご注文の際は、備考欄に商品名と数量をご記入ください。


引用:

*①

2008年 株式会社二見書房 池川明

「ママ、さようなら。ありがとう」 位置No.224/999

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