太古蓮フラワーエッセンス

「もう、何年も投稿してるんだってな」

落選しっぱなしなのに、という言葉を俺は胸にしまい込む。

ロイドは下を向き、ただうなずいた。

「どうしてそんなに、続けられるんだ?」

単純な疑問を投げかけると、ロイドはうつむいたまま答えた。

「…………誰か、が…いるから」

途切れ途切れの声が、シンとした部屋で不気味に響く。

俺はちょっとぞくりとしながら、もう一度訊ねた。

「誰かって?」

「自分でもわからない。特定の人じゃなくて、誰かなんだ。誰かに向けて、届くべき人に届けたくて、書かずにいられない衝動で書いてる。その誰かが何人いるのか、いつ届くのかもわからない。ただ、読んだ人がこれは自分に向けて書かれた小説だって思ってくれたら、きっとそのとおりなんだ」*1

 

何か良い本はないかと探してみる。

もとい、『良い本』なら沢山ある。

正確にいうのであれば、きっと私は『自分のために書かれた本』を探しているのだと思う。

たとえ偶然見つけたものであったとしても、『その本』のどこかに私の悩みの霧を晴らす言葉が必ずある。

本であれ、言葉であれ、人であれ、出逢いとはいつも必然的に起こるものだと思うから。

 

「はぐれましたか?」

私が出逢った『その本』では、さまざまな悩みを抱えた登場人物たちが不思議な案内所に迷い込む。

そして案内役のおじいさんはきまってこう尋ねる。

「はぐれましたか?」

 

ああ、そうなのかと思った。

私が今抱えているこのモヤモヤとした気持ちを表す言葉は『はぐれている』なのか。

私は『その本』の登場人物たちと同じようにはぐれてしまっている。

『終わり』と『はじまり』のはざまの、どこにも属していない『中間』のこの場所で。

 

 

10年近く暮らしていた土地に別れを告げ、新しい場所へと引っ越しをしました。

さまざまな出来事を経験したあの土地を離れる時は、やはり胸にこみ上げてくるものがありました。

あの土地で私はシングルマザーになり、たくさん泣いて、たくさん怒って、たくさん悲しみました。

だけど人生とはやはりそれだけではなくて、良いこともたくさんあったし、神様からのギフトにちがいないと思えるような出逢いや生涯の友となり得る出逢いもありました。

10年前、子供たちがまだ小さいのにどうして知り合いがだれもいない遠い場所へと引っ越さなければならないのかと、あふれるほどの不満と不安を抱えていた自分自身を思い出すと、切なく、そして愛おしい気持ちになります。

だからあの時の自分にむけて心の中で語りかけます。

「大丈夫、これでよかったんだよ」

 

「ちょっと買い物に行ってくるね」

まだ荷解きが終わっておらず山のように積まれた段ボール箱を横目に子供たちにそう告げました。

歩いてすぐの距離にあるスーパーに夕飯の買い出しに行くためです。

玄関のドアを開けると、オレンジとピンクのグラデーションの空が目に映り、きれいだなとほんの少し見とれてしまいました。

そして、今の私の心はきっとこんな色はしていないと思いました。

落ち込んではいないけれど、憂鬱な気持ちであることは否めません。

モヤモヤとくすんだ心の色を振り払うように、少し早めに歩いてみることにしました。

 

新しく生活を始めた場所は、子供たちにとっても、私にとっても初めて暮らすまったく知らない土地です。

だから私も勝手がわからず戸惑うことがあるし、子供たちは「前住んでいたところとはここがちがう、あそこがちがう。前の場所に帰りたい」ともらす時があります。

それを聞きながら、これはきっと私の心の声なのだろう思いました。

だけど私の心の中には、不思議なほど強い確信があるのも事実です。

「大丈夫、この選択に間違いはない」という強い確信。

この確信があるのはきっと、引っ越しを決めた頃から太古蓮のフラワーエッセンスを飲み続けていたからだと思うのです。

 

私が出逢った『その本』では、人生に『はぐれてしまった』登場人物たちが、迷い込んだ案内所で『はぐれてしまった状態』から抜け出すきっかけとなるアイテムを教えてもらいます。

それは蚊取り線香であったり、巻き寿司であったり、ト音記号であったり、人によってさまざまです。

そしてそれぞれがアイテムに導かれながら、進むべき道を再び見つけていくのです。

 

そうだったと太古蓮のフラワーエッセンスを手に取りました。

うっかり、進むべき道から外れて、戻れなくなってしまうところだったと思いました。

私はまだ『終わり』に未練があるし、『はじまり』に対して不安な気持ちがあります。

だけどこの道で間違いないと蓮の花が指し示す方向に向かって歩けばいいのだと、あらためて心に決めました。

きっと今の私を導いてくれる『アイテム』は太古蓮のフラワーエッセンスだと思うのです。

 

「ロイド先生!」

ロイド先生がもう一度振り返る。

「あの……あの、私、『瓶の中』を読みました。すごく救われた気持ちになって、あの本、私に向けて書かれたんじゃないかって、そう思いました」

ロイド先生は少しの沈黙のあと、こう言った。

「そうだよ」

そしてサングラスを外して私をまっすぐに見る。

「あなたに向けて、書いたんです」

涙があふれた。

そうだったんだ、ほんとうにそうだったんだ。

肯定してもらえたことが嬉しかった。

いつくしむようなまなざしを私に向け、ロイド先生が言った。

「読んでくれてありがとう。あなたに、ちゃんと届いてよかった」

私の背で、羽が大きく広がる。*2

 

フラワーエッセンスは、花と光と水のちからによって出来上がります。

だけどそれだけではなくて、製作に携わるすべての方々の『届くべき人のもとに届き、その人の人生が幸せで満ちあふれたものになりますように』という『特別なだれか』のために向けられた想いも私たちは受け取っているように思います。

だからきっと、私たちの手元に届くフラワーエッセンスはどれも私たちのために『特別に』作られたものだと思うのです。

 

太古蓮フラワーエッセンス

太古蓮フラワーエッセンスのテーマは、悟り・導き・覚醒です。

このエッセンスをとることで、悩みの霧が晴れ、今まで見えなかったものが見えてくるようになります。

どんな場所にも光があることに気づき、そこに向かって自分自身をパワーアップしていくことができます。

直観力が高まり、自分の魂と繋がる感覚を得られるので、やるべきことや使命が明確になるでしょう。

 


引用:

*1 2021年 株式会社宝島社 青山美智子

『鎌倉うずまき案内所』 ページ263/350

*2  2021年 株式会社宝島社 青山美智子

『鎌倉うずまき案内所』ページ158/350