名前に込められた想い

「なんで私、この名前なの?」

あれはいつのことだっただろう。

あるとき母に尋ねたことがある。

もう祖父母の家では暮らしていなかったから、小学三年生くらいだったのではないだろうか。

「どうして?」

突然の質問に質問で返された。

私はむしゃくしゃしていた。

あの日はいつものごとく同じ年のいとこと喧嘩になり、いつものごとく私が負けた。

彼女は容姿にとても恵まれていて、それだけでなく名前も可愛らしい。

子どもだけでなく、まわりの大人たちも彼女が放つキラキラとしたものに惹かれているさまが私を苛立たせる。

彼女に勝てるものなど私にはない。

羨ましくて妬ましい。

大嫌いなのに、私も彼女みたいになりたいと思う。

けっきょくは私も彼女に魅せられるひとりでしかなかった。

 

「名前はね」と母が続ける。

「お父さんがつけてくれたんだよ」

それを聞いて、あぁやっぱりかとがっかりする。

仕事で不在がちの父。

久しぶりに家に帰ってきたかと思えば、厳しくて、荒々しくて、声も無駄に大きく、怒られていても、褒められていても、体が強ばる。

私はいつの頃からか父に対して無邪気な気持ちを持つことをやめ、心を向けることをやめていった。

「お父さんね、絶対この名前だって言ってね。漢字もこれに決めているけど、画数は大丈夫だろうかって一生懸命調べてたよ」

フンと心の中で鼻を鳴らした。

目に見えるもの、触れられるものしか信じないくせに姓名判断は気にするのかと小馬鹿にした。

だったらもっと可愛い名前にして欲しかった。

こんなありきたりな名前じゃなくて、あの子の可愛さに勝てるようなオシャレな名前にして欲しかった。

 

まだ子どもだった私は、守るべきものを持った経験もなければ、自分が守られていることにすら気づいておらず、知らないことがたくさんあった。

 

名前は親から子への最初の贈りものだと言われています。

苗字が変わることはあっても、よほどのことがない限り名前は生涯を通して私たちを表わすものとなります。

生まれてくるわが子が、運命とどのような契りを交わし、この世に生を享けてくるのか。

そんなこと、親にはわかりようがありません。

けれども、だからこそ願わずにはいられないのでしょう。

この子にたくさんの良きものが与えられますように。

手にすべき幸運を掴み取ることができますように。

たとえ躓くことがあっても立ち上がる力を持てますように。

まわりの人たちを大切にし、多くの人たちから愛されますように。

いつも光がある場所にいられますように。

たとえ暗闇の中に迷い込むことがあったとしても、光を見出す力を持てますように。

希望の光が絶え間なくこの子を照らし続けますように。

いつか親のもとを離れ、そばにいて守ってあげることができなくなっても、この子に贈るこの名前に込めた幾多の想いが、この子を守ってくれますように。

 

歯医者さんの診察台に座って先生が来るのを待つ間、ぼんやりとモニターを眺める。

レントゲンの写真の上に小さく自分の名前が記されていることに気づく。

良い名前をつけてもらったんだなと思いながら見つめていると、急に泣き出したい気持ちになって慌てて気持ちを抑え込む。

嫌いなのに大切な人。

父に対するこの気持ちをいったい何と呼べばいいのだろう。

父は愛情を表すのがあまりにも下手だったけど、きっとたくさんの願いと愛を込めて私にこの名をくれたのだろう。

 

この世には見たいけれど見られないものがたくさんあって、気持ちはつのるばかりだ。*1

 

君が幸運と成功の要因を手にしますように

君が自信を持って常に最善を尽くせますように

努力なんかしなくても、大きな心でいられますように

幸せという言葉の意味が、君に伝わりますように

胸の奥で響くビートが常に君を導いてくれますように

大切なゲストのような待遇を君に

心安らかに、ひと息つけますように

君の今日の最高が、明日の最低になりますように

先行く人の少ない道が、君の進路となりますように

君が傷つけることになるハートに乾杯

君が変えることになる人生に乾杯

君を愛する方法は無限にある

君にすべてを手にして欲しい

共に過ごすことになる楽しい時間に乾杯

君がいないと僕は悲しくなる この事実に乾杯

すべてが君のものになりますように

ダイヤモンドのようにピカピカの賞をいくつももらえますように

一瞬、一瞬が確実に君のものになりますように

何もかも手に入れて欲しい

思いつくものすべてを

どんな道を進もうとも

信じていれば何だって起こりえるから

何もかもが君のものになりますように *2

 

サンフラワー(アラスカンエッセンス)

父親の子供に対する愛情表現が下手なことが原因で、子供が本来の明るさを発揮できないときに役立ちます。

父親と子供の両者で使用することをおすすめします。

また、父親が留守が多く、十分なコミュニケーションを取れない子供の支えにも良いでしょう。*3

 


引用:

*1 平成25年 株式会社幻冬舎 よしもとばなな

『まぼろしハワイ』 ページ10/196

*2 【和訳】Jason Mraz「Have It All」【公式】 (youtube.com)

*3 2010年 株式会社河出書房新社 中村祐恵

『医師が教えるフラワーエッセンスバイブル』156ページ

 

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