変化の一歩
胸の痛み 喉を伝い 聲にならない
夜の帷 優しくいたい 素直でも在りたいのに 僕らはヘタクソに生きてる
愛されたいのに
いつも通り 間違いばかりの今日をまず愛そうか
暗闇の中の光が傷跡に染みるが 矛盾こそ生き抜く為の美だ
手を取り 微弱な風に揺られて 無茶苦茶なこの世界を愛そうか
歩くのが疲れたの? むしろ正常でしょう?
見事さ また間違えて 履き違えてく
不器用な 愛しいボンクラ 等しい僕ら。*1
LINEの通知が来る。
『元気にしてる?』弟からのメッセージだ。
『元気だよ』と書いて、やっぱり消す。
『毎日いまいち』と書くと三角の送信ボタンを押す。
毎日いまいち。
自分だけ、何もかもを上手くできていないように感じる。
お昼休みになんとなく見るインスタは、何もかもが上手くいっている人たちの投稿で溢れかえっている。
私はいつになったらあちら側の人間になれるのだろうとため息をつく。
やるせなさとかうらやましさとか焦りとか諦めなどがたっぷりと含まれたため息を、もう何度ついたことかわからない。
生きるって難しいパズルをやっているみたいだなと思う。
みんなどうやって正しいピースを見つけているのだろう。
未来は、〝今〟の連続の先にあるのだ。
こんなしょぼくれた今の先には、やはりしょぼくれた現実しか待っていないように思えた。*2
頭ではわかっている。
自分の心の中を変えないことには、目の前の現実は変わらない。
今まで何十年もかけて心の中に積み重ねてきたさまざまなネガティブな思いが、鏡のように私の現実の世界に映し出されているのだから。
だけど、この間違いだらけの日々をどこから正していけばいいのだろう。
私はいくつになっても生きるのがヘタクソだと思う。
期待通りではない現実に対する憤りのために。
自分が人生の犠牲者のように感じられて、外の世界を非難することしかできなくなってしまっているから。
自分の毎日に、欠点しか見つけられなくなってしまっているから。
怒りは野放しにせず、どこかのタイミングで自分自身を癒して〝愛〟に変えていく必要があります。
そこで大切なのは、怒りの正体をよく見てあげることです。
怒りが湧いてきたり、イライラしてきたりしたときには、「私はなんで怒っているんだろう?」「私はなんでイライラしているんだろう?」と積極的に思考を見つめてください。
怒りは決してネガティブで悪い思考ではありません。
怒りは自分の中にしまい込んできた思いに気づくための大切なサインです。*3
ノートとペンを準備する。
どうせ言葉にして伝えたところでどうにもならないし、と押し込めてきた心の声をひとつひとつ書き出していく。
ひとつひとつ、本当の言葉を拾いながら、自分の気持ちに寄り添うと、しだいに心が軽くなっていく。
魔法のような、奇跡のような、瞬間的に救われる答えなどはない。
塗り重ねられた苦しみを、一枚一枚剥がしていくしかないんだと思う。
剥がし終わって初めて、本当の自分になれるんだ。*4
自分で自分のことを救い、自分で自分の心を優しく抱きしめる。
そんな生き方をこれからは選んでいこう。
みんな、進もうとしている。
それぞれの痛みや苦しみを抱えながらも歩こうとしている。*5
ひとはきっと、いつでも変化の一歩を必死に踏んで生きていく。
たくさんのものを抱えて、なお。*6
引用:
*1 Mrs. GREEN APPLE 「ナハトムジーク」
*2 2024年 株式会社双葉社 成田名璃子
『時帰りの神様』128/312
*3 2024年 フォレスト出版株式会社 宮増侑嬉
『すべて潜在意識のせいでした』ページ24/148
*4 2022年 株式会社小学館 町田そのこ
『宙ごはん』 ページ337/403
*5 2022年 株式会社小学館 町田そのこ
『宙ごはん』 ページ384/403
*6 2022年 株式会社小学館 町田そのこ
『宙ごはん』 ページ395/403