ブッシュ・フューシャのエッセンス
小学生の頃のことでした。
国語の時間に先生が言いました。
「教科書の○○ページを開いてください。最初のところから誰かに音読してもらいましょう。そうですね・・・。ではAさん、お願いします」
Aちゃんがゆっくりと立ち上がると、教室のあちこちから、耳障りなざわめきが聞こえてきました。
わざとらしい大きなため息
「えー」という非難の声
ヒソヒソ声やイヤな響きのクスクス笑い
私はいたたまれない気持ちになり、どうにかしてAちゃんを助けられないだろうかと心の中でオロオロとしていました。
今日こそは勇気を出して「私が代わりに読みます」と手を挙げてみよう。
だけど、そんなことをしたら先生はきっと怒るだろう。
意地悪な子たちからは「なに良い子ぶってんだよ」と非難されるだろう。
そう思うと怖くなって、結局なにもできずに他の子と同じようにただAちゃんを見つめるだけでした。
Aちゃんの顔はすでに真っ赤でした。
教科書を両手で持つと、先生から指示されたページを読み始めました。
だけど、Aちゃんの口から発せられているのは『読む』というものとは程遠いもので、たどたどしく、まるでひと文字、ひと文字を絞り出しているかのように聞こえました。
「ふざけないで、ちゃんと読みなさい」
Aちゃんが読み始める前からすでに怒った顔をしていた先生が鋭い声で言いました。
本当は先生もみんなも気づいているはずだと思いました。
Aちゃんはふざけてなんかいない。
きっと何か「読めない」理由があるんだ。
でもどうしてみんなみたいに「普通」に読めないんだろう。
緊張するから読めなくなるのだろうか。
Aちゃんの震えた声を聞きながら、私は挙げることができなかった右腕を無意識にガジガジと掻きむしっていました。
ディスレクシアのことを知ったのは大人になってからでした。
ディスレクシアは、知的能力および一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書きに著しい困難を抱える障害であり、学習障害の要因となることがある。
失読症、難読症、識字障害、(特異的)読字障害、読み書き障害、とも訳される。
ディスレクシアは学習障害の中で最も多い障害であり、世界すべての地域で確認され、人口の3-7%ほどに見られるが、それがハンディとなっているのは20%程度である。
一部の人々はディスレクシアを、長所と短所を併せ持つ、異なる学習のプロセスとみなすべきだと主張している。
識字プロセスには、文字や単語を構成する音に結びつけて分析する「音韻的処理」から、単語、文章そのものからダイレクトに意味を理解する「正字法的処理」までいくつかの段階がある。
ディスレクシアはそれら様々な段階での症例が報告されており、例えば2つの文字の違いがわからない、文字や単語の理解まで非常に時間がかかる、文字の並びが歪んで見える、文字自体が二重に見えるなど様々である。
研究によって、ディスレクシアの人は、脳での情報処理の仕方が一般の人と異なることが明らかになってきている。
一般の人は脳内の情報を統合する領域で文字を自動処理しているが、ディスレクシアの人々はこの文字処理がスムーズに行えず、通常とは違う脳の働きをしているという。
ディスレクシアの人々は文字が読める大多数の人々とは異なる脳の領域を使っており、そのためスムーズな文字の読み書きが行えないと考えられている。*1
Aちゃんにどうしてみんなと同じように音読ができないのか、直接尋ねたことはなかったので正確なことは分かりません。
でもきっとAちゃんには、簡単には読めない状態で文字が見えていたのだと思います。
結局Aちゃんと同じクラスになったのはあの学年での1年間だけで、その後は違うクラスになったので自然と一緒に遊ぶ機会も減り、だんだんと疎遠になっていきました。
校区が異なり、違う中学校に通うことになった為、その後彼女がどのように過ごしたのかは分かりません。
自分の力ではどうしようもできない事、どうしても変えられないことを抱えながら私たちは生きています。
たとえば人種がそのひとつです。
肌の色や、髪の色や、目の色。私自身、人種差別を経験して「どうして私の人種による見た目だけで、私がどういう人間か決めつけるの?」と悔しい思いを何度もしました。
Aちゃんは外から見える要素だけを判断基準として、『普通の子』なんだからみんなと同じように『普通』に努力をしなさいと怒られ続けていました。
だけどもし、Aちゃんがあんな時代ではなくもっと研究が進んでいる時代に生まれていたら、もっと違う子供時代を過ごしていたのではないでしょうか。
だって昭和の時代の、あんな田舎の小学校でディスレクシアのことを知っている人などいなかったはずだから。
もし、情報も道具も知識も揃っている今の時代に生まれていたら。
適切なサポートが受けられて、あんな顔をしてみんなの前に立たされることも、好奇の目に晒されることもなかったのに。
次の世代に本当に残してあげたいものの種を、つまり「希望の種」をまき続けていくことが大切です。
いつか、未来の人たちがこの時代を振り返ったときに「あの時代の人たちのおかげで、今の幸せがあるんだ」と言ってもらえるように。
そんな希望の種をまき続ける毎日をおくることにこそ、僕たちは生きている実感、幸福感があるように思います。*2
だけどきっとAちゃんのような思いをしてきた人達が沢山いたからこそ、この障害を乗り越えるための研究と、サポートをするための取り組みが進み、次の世代のための「希望の種」がまかれたのかもしれません。
ブッシュ・フューシャ(オーストラリアブッシュフラワーエッセンス)には学習障害に関する重要な効能があります。
学習障害の原因は右脳と左脳の不調和にあるケースが多いのですが、このエッセンスはその両方の脳の機能を統合してくれるのです。
難読症にも用いることが可能で、実際に多くの難読症患者におどろくほどの効果がありました。
ブッシュ・フューシャ・エッセンスの素晴らしいところは、他のブッシュ・エッセンスと同様、障害(ブロック)を素早く除去できることです。
このエッセンスを一回とっただけで、即座に変化が見られます。
私たちのワークショップでは、参加者に文章を音読してもらい、ブッシュ・フューシャを一回とった後、再度読んでもらいますが、その違いには驚かされます。
平坦で単調な声であったものが、突然抑揚が付き息吹を取り戻し、読み方も自信に満ちてくるのです。
学習障害を取り扱っている多くの研究所や教員の方々が、今やこのエッセンスを自分たちの教育プログラムに採り入れています。
難読症の場合、ブッシュ・フューシャを2週間飲み続け、その後何週間か休みをとり、それからまたエッセンスを繰り返すことができます。
何週間も何カ月も継続する必要があるかもしれませんが、一旦ある程度の改善がみられたら徐々に量を減らすことができます。*3
引用:
*2 2017年 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 喜多川泰
『きみが来た場所 Where are you from? Where are you going?』ページ207/215
*3 2004年 フレグランスジャーナル社 イアン・ホワイト
『オーストラリア・ブッシュ・フラワーエッセンス』81~83ページ