再生の物語

朝がまた来る。

アラームがもう起きる時間だと枕元で静かに騒ぐ。

目ならもうとっくに覚めている。

夜が明ける前から「恐怖感」という生き物が、毎日私のことをたたき起こすから。

こんな日々はもうたくさんだ。

本当はもうここで人生をリタイアしたい。

だけどここで諦めるわけにもいかないと思う。

だって私には守りたいものがあるから。

失うわけにはいかないものなら沢山ある。

アラームを消す。

すべてがめちゃくちゃになって終わってしまったように感じる。

希望の兆しなど見えやしない。

それでも私はフラワーエッセンスのボトルに手を伸ばす。

「この人生にはまだ続きがある」そう花たちがささやいているように感じるから。

ここからはじまるのは再生の物語。

そう花たちがささやいているように感じるから。

 

バッチ博士が最後に発見したフラワーレメディはスイートチェストナットだったそうです。

スイートチェストナットは、ブナ科クリ属の落葉高木で、千年以上も生き続ける生命力を持つとても強い木です。

通常ブナ科の植物の多くは風媒花ですが、スイートチェストナットは虫媒花の道を選びました。

風媒花から虫媒花へと生き方そのものを変化させたのです。

これは、スイートチェストナットを必要とする人が苦しみから脱却するために、新たな人生観や世界観を獲得して新しい自分に生まれ変わることを意味しています。*1

 

スイートチェストナットのエッセンスを必要とする人がいるのは、人生の中で最も暗く、そして魂が苦悩するほどの苦しみを経験する場所です。

樹齢の若いスイートチェストナットは、真っすぐに伸びた端正な姿をしていますが、何百年かを経て生涯が終わりに近づく頃には、樹皮はねじれて、まるでもだえているかのような奇怪な姿へと変貌するそうです。

シャンドゥルールのテキストでスイートチェストナットの説明を初めて読んだとき、目に留まったのは「灰の中から不死鳥のように蘇る」という言葉でした。

生と死と再生というサイクルを繰り返す不死鳥にとって、「終わり」は「新たな始まり」を意味します。

私がゆっくりと通り抜けていた苦悩というトンネルは永遠に続くものではなく、いつか終わりを迎える日が必ずあるということ。

そして、この内的な成長を促す「苦悩」の過程では、「再生」という輝きを帯びた新しい何かが誕生しようとしていることを、あの時、スイートチェストナットのエッセンスが教えてくれました。

スイートチェストナットの幹の全体には長年にわたって刻まれた特徴的な溝があります。

スイートチェストナットは、苦悩の足跡を隠すことなく、生と死と再生を繰り返しながら、傷とともに生き、成長し続けることを選びました。

 

傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷のまわりをそっとなぞること。

身体全体をいたわること。

ひきつれや瘢痕を抱え、包むこと。

さらなる傷を負わないよう、手当てをし、好奇の目からは隠し、それでも恥じないこと。

傷とともにその後を生きつづけること。*2

人間も世界も不完全だ、ひどいこと、つらいことも起きる。

わたしたちは、傷つきやすく、もろく、受けた傷が完全に回復することも難しい。

それでも生きていこう、お互いに、見ていること、幸せを祈ることはできるから。

それが力づけとなること、支えになることもあると信じられるから *3

 

引用:

*1 シャンドゥルールテキスト

*2 2022年 株式会社筑摩書房 宮地尚子

「傷を愛せるか」226ページ

*3 2022年 株式会社筑摩書房 宮地尚子

「傷を愛せるか」244ページ

 

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