ゴース
神様は本当にいますか?
もし本当にいるとしたら、他の人たちのことは助けるのにどうして私のことは助けてくれないのですか?
真っ暗な道にひとりきりで、どちらの方向へ進めばいいのかすら分からない。
そんな気持ちの時に何度も心に湧いてきたのがこの問いでした。
上手くいかないことだらけ。
周りにいるのは嫌な人たちだらけ。
人生は選択の連続というけれど、私は進む道を選ぶたびに間違った選択をし続けてきたのだろう。
とんでもなく間違った場所に迷い込んでしまって、そこから抜け出せずにいるという感覚が常につきまとっていました。
どうかわたしがここから抜け出すチャンスをください。
そう祈りました。
私は特に何かの宗教を信仰しているわけではありません。
けれども幼い頃、祖母に連れられてお寺にお参りに行った時、じっと手を合わせ続けるのに飽きて薄目を開けてちらりと祖母の方を見ると、まっすぐに静かに祈っている祖母の横顔がありました。
祖母の他界後、お仏壇の前には朝と夕方、お経を唱える祖父の背中がありました。
神様の存在を信じていた祖父母の記憶があったから、神様が本当にいても、いないとしても、「神様はいると信じたい」と思いました。
人は生きていく上で、宗教に関係なく「信じられるなにか」というよりどころを持つことで希望をつなぎ止められるものだと思いました。
シャンドゥルールでフラワーエッセンスの勉強をしていた時、テキストに書かれてあったゴースのフラワーエッセンスの説明をよく覚えています。
ゴースの種子は非常に強い生命力を持っています。
蟻によって地中に運ばれた後、蟻は種子についている物質だけを食べるため、種子はそのまま地中に残ります。
そして150年から200年という長い寿命の間、発芽力を失うこともなく、眠り続けるのです。
暗い土の中で、長い間芽も出さず眠り続けるゴースの種はまさに絶望の中で待ち続ける状態に似ています。
ゴースは他の植物では育たない荒地でも生き抜けるだけの強さと忍耐力をもっています。*1
ゴースの種子こそとんでもない場所に迷い込んでしまったものだと思いました。
150年から200年もの長い間、暗闇の中で生き続け、芽吹く時を待ち続けなければいけないなんて。
ゴース種子の希望をつなぎ止めるものはいったい何なのだろうか。
そう思ったのを覚えています。
母がフジコ・ヘミングさんの大ファンで、コンサートのチケットを取るのを手伝って欲しいと頼まれたことをきっかけに彼女のことを知りました。
唯一無二の才能を授かった天才ピアニスト。
それにも関わらず、チャンスに恵まれず60代後半にしてやっとピアニストとしての成功を手に入れた彼女の壮絶な人生を知ったとき、まるでゴースの種子のようだと思いました。
ピアニストで日本人の母と画家で建築家のスウェーデン人の父を持つ彼女は、ベルリンで生まれ、5歳のときに家族と共に日本で暮らし始めました。
母親からの厳しいピアノの手ほどき。
家族を日本に残してスウェーデンに帰ってしまった父親。
外国の血を引くことに対する偏見や差別やいじめ。
中耳炎により16歳のときに失った右耳の聴覚。
ウィーンでのリサイタル直前に引いた風邪により聞こえなくなってしまった左耳。
それにより失ってしまったピアニストとしての成功のチャンス。
それから何十年もピアノを教えながらヨーロッパで過ごした日々。
フジコ・ヘミングさんは、この波乱万丈の人生を「祈りがあったからやってこれた」とあるインビューで語っていました。
信仰は子供のときから自然についてきました。
青山学院でクリスチャンの教育を受け、教会の日曜学校でも子供ながらに牧師の話と姿に心打たれたものです。
人生で最も大切なのは信仰と祈り、それに愛です。
私は波乱万丈の人生の終わりに幸運を勝ち得ましたが、「遅くなってもまっておれ。それは必ず来る」という聖書の言葉は、私に訪れたのです。
『愛するものに囲まれた人生 ピアニスト フジコ・ヘミング』 より *2
ゴースは希望のエネルギーを持つフラワーエッセンスです。
ゴースの種子は、どんなに長い間耐え忍ぶことを強いられても希望を捨てません。
それはきっと、最後にはすべてがうまくいくことを心のどこかで信じ続けているからだと思います。
「信じられるなにか」を持ち続けることには希望をつなぎ止める力があります。
引用:
*1 シャンドゥルールテキストより
*2 英国ニュースダイジェスト
http://www.news-digest.co.uk/news/features/7027-ingrid-fuzjko-hemming-interview.html
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