天使のはしご

暗闇と絶望

光と希望

この相反するものの戦いでは、私たちが意識を向け続けたほうが勝ち残る　*1

目の前には無数のブレーキランプの光が並んでいる。

夕方の渋滞の時間。

子どものお迎えに行く人、夕飯の食材の買い出しに行く人、仕事が終わって家路へと急ぐ人、だれかとの待ち合わせ場所へと向かう人。

なかなか前に進まず退屈を持て余し、ふと空に目をむける。

憂鬱な色をした分厚い雲が広がっている。

ちょうどいいと思った。

心の中にもやもやとしたものを抱えている時に、空が清々しく晴れていたら少しがっかりするから。

さらに視線を動かすと、遠くの雲の切れ間から、光の線が地上へと降り注いでいた。

まるで定規できっちりと引いたような光の線。

この光は『天使のはしご』という名を持つそうだ。

初めてこの名を聞いた時、天使には翼があるのだからはしごなど必要ないだろうと思った。

だけど人間の力など到底およばない自然が作り出すその光はやはり神々しくて、それに『天使のはしご』という名をつけたくなった人の気持ちがわからなくもなかった。

だれかを救うために天使が天界から地上へと降り立っているのか、はたまた仕事を終えた天使が空へと舞い戻っているのか。

あの光で包まれた場所では、だれかの心が救われたのだろうか。

あの光で照らされた場所にいる人たちは、自分たちに天使のはしごが掛けられていることに気づいているのだろうか。

「救い」が必要な人は世の中にあふれかえっている。

あんなに限られた場所だけでは到底足りない。

あの光を『天使のはしご』と呼ぶのであれば、それは世界中を照らすべきだ。

助けを求める人たちは、藁にもすがりたい思いを抱えながら毎日を過ごしている人たちは、きっと世界中にあふれかえっている。

試練としか思えないような出来事が起こったとき、私は心に強い打撃を受けて食事ものどを通らなくなる。

あの人が悪いと責める気持ちが込み上がる。

だけどたとえ誰かを責めたところで解決することは何もなく、状況はむしろ悪化するだけだということは分かっている。

運命は決まっているのではなく、自らの手で創り出しているもの。

ゆえに、いかようにも変えられるそうだ。

変えるべきは自らの思考。

心の中に積み重ねてきたものに気づいて変えていくしかない。

『気づくだけで人生が好転する思考のレッスン』の著者である大石洋子さんは、自身のYouTubeでこのように話していた。

どのようなことも自分の思考から出来上がっていると考えられるようになると、現実がスムーズに変わっていきます。

私たちはたいてい、良いことが起きた時は「私の思考が現実化したんだな」と思いますが、悪いことや嫌なことが起きた時は「私の思考が現実化しているとは思わない」と思ってしまいます。

だけど良いことも悪いことも、すべてをひっくるめて、どうやら自分の思考からできているらしいと、このことを受け入れられるようになると、どのような「変化」も穏やかなものになります。

自分の目の前に、嫌な人や嫌な出来事、理不尽な出来事が現れるのは、自分の潜在意識の中に、人を否定するような思考や人を下に見るような思考や「お前を認めないぞ」というようなネガティブな思考が、自分でも知らないうちに溜まっていったからです。

この自分の中に溜まったネガティブな思考が、自分に与えられる現実としてやってきた時に、私たちは「理不尽だ」と感じてしまうわけです。

もしかしたら自分が100％悪くなくて、相手が100％悪いということもあるかもしれません。

だけど過去を遡ってみた時に、この目の前で起きている「100％理不尽な出来事」を作り出す元種になっている自分の思考が必ずあるはずです。

それを認めることができた時、だんだん自分に優しい現実がやってくるようになります。

この「思考のしくみ」を見抜くことができた時、嫌なことが起こってもジャッジにエネルギーを使うのではなく、「これからはどんな思考で生きていくの？」と思考を選択し直す機会として捉えられるようになります。*2

改めて立ち止まって考えてみると、思い当たる節がある。

もういちど自分の心の中を見つめ直し、これからは違う選択をして生きていこう。

感謝の言葉を忘れたら、幸せの言葉も忘れてしまうそうだ。*3

人生は穏やかで幸せなほうがいい。