お守りのボタン
小学生の頃、突然読書が好きになりました。
それまで、たいして触れることさえしなかった本を読み始めるきっかけとなったのは「テレビが観られなくなり、することがなくてつまらなかったから」でした。
しかしそのおかげで、本の世界は自分が想像もできない不思議な物語であふれていることを知るようになり、それからは貪欲にさまざまな本を読むようになりました。
それまで外で遊ぶか、テレビを観ることしかしなかった私の変化に喜んだ父は、よく近所の本屋さんに一緒に行って、私が欲しい本を買ってくれました。
ぴかぴかで真新しい本も好きでしたが、古い本も好きで、時々父が連れて行ってくれる古本屋さんに行くのも楽しみでした。
店内には棚に収まりきれずに山積みにされている本の島があちらこちらにできていて、体の向きを変えながら狭い隙間を縫うように歩かなければいけませんでした。
そしてそれらの本の島を注意深く見ながら、面白そうな児童書を探し出すのです。
色褪せた表紙やベージュ色に変色してしまったページからは、古くなった紙と埃が混ざった匂いがして、私はそれを「お宝」の匂いのように感じていました。
実際に、普通の書店では置いていないような、翻訳された海外の児童書が沢山あり、カタカナで書かれた美味しそうな響きのお菓子や、「そんな組み合わせで作られたご飯って本当に美味しいのかな」と思うような料理や、「日本にはそんな考え方する子はきっといないと思うけど」と感じるような子供の日常が綴られていて、当時の私にとっては、どの本も貴重な出会いでした。
大人になった今では、さまざまな理由で本を手にとります。
たとえば自分が抱えている問題の答えが欲しいとき。
ただ泣きたいとき。
まるで自分の気持ちを代弁してくれているかのような言葉にふれたいとき。
明るい気持ちで未来を見られるように励ましてもらいたいとき。
「バカだなー」と、げらげら笑いたいとき。
ただ、本を読むにあたって子供の頃から気をつけていることがひとつだけあります。
それは「読みながら血の気が引いていくような怖い話は避けること」です。
たとえば、100話ほどの物語がつまっている日本の昔ばなしの本を読んでいた時のことです。
この本には、子供にとっては少し怖く感じる話も入っていました。
その時、これはただのお話だと自分の現実と上手く切り離して読むことができれば何ともなかったと思うのですが、私はその話をまるで自分が目撃した事実のように受け止めてしまい、恐怖心を払拭する方法がわからないまま、心が回復するまでに何日も掛かってしまいました。
それから同じような経験を重ねていくいうちに、自分が苦手なジャンルがどのようなものか次第にわかっていき、それらを意識して避けるようになりました。
最近、今まで読んだことがない面白さを持つ本に出会いました。
話の続きを知りたくて、ちょっとした隙間時間にも読み進めるほど夢中になりました。
ところがです。
思いがけないところから、私が苦手とする暴力的描写がはじまり、読みながら体がどんどん冷たくなっていくのがわかりました。
恐怖心があっという間に体の隅々にまで染みわたり、ああ、これはまずいなと思いながも読み進めた結果、やはり心に強いダメージを受けてしまいました。
そこまで深刻に受け取るほどのことではなかったと自分でも思いますし、この本は本当にとても面白かったのですが、私の心の反応のしかたは子どもの頃とさほど変わらないままでした。
けれども以前と違うところは、今はフラワーエッセンスが手元にあるということです。
予期せぬことが起こってショックを受けているとき、そこからどのように回復すればいいのか、その術が分からないときは、ただひたすら重たい不快感を抱え続けるしかありませんでした。
けれども「これがあるから大丈夫」というなにかを持っていれば、それは本当に心強いことだと思います。
以前、インスタグラムで吉川めいさんと長谷川潤さんがメンタルヘルスについて語り合っているインスタLiveのアーカイブを観ました。
その時に吉川さんが紹介したある研究の話がとても興味深いものでした。
この研究は、強いストレスがかかるような出来事が自分の身に降りかかった時に、比較的上手くこの逆境を乗り越えられるタイプの人とそうでないタイプの人の違いはいったい何なのかを調べるために行われました。
行われた実験は次のようなものでした。
まず10名の被験者の人たちが二つのグループに分けられます。
そしてそれぞれのグループが、窓がひとつもない部屋に入れられます。
そこでベルが大音量で鳴り続くのです。
どちらのグループにも同じ音量で、同じレベルのストレスがかかるのですが、ひとつのグループには、これからストレスがかかる状況下に置かれ、ただそれに耐え続けなければいけない旨が伝えられます。
そして、もう片方のグループは、ストレスがかかることがこれから起こるけれども、万が一耐えられなくなった場合には、部屋に設置されたボタンを押して、実験を止めてもいいと伝えられるのです。
実際に実験が始まると、ボタンがない部屋のグループの人たちのストレスレベルが急速に上がるのに対し、もう片方のグループのストレスレベルは、上りはするものの、ボタンがない部屋のグループほどにはなりません。
そして、ここで興味深いのが、ボタンを押してもいいにも関わらず、実際にボタンを押した人がだれもいなかったということです。
この実験により、いざという時にはボタンを押せるという安心感がストレスレベルの違いを生み出しているということがわかったそうです。
「人は、いざという時にはこれがあるというサポートシステムを持っているだけで、人生で起こりえるさまざまなストレスを大幅に軽減できる」と語る吉川さんの言葉には、なるほどと大きく頷かずにはいられませんでした。*1
生きていると良いことも、思いがけないことも、深く傷つくようなことも起こります。
けれども私たちは皆、幸せになるために、愛を知るために、誰かやなにかを大切に想う気持ちを知るために生まれてきたのだと思います。
だから時に投げかけられる心無い言葉や、不幸は全力で振り払っていいと思います。
人はだれもが、だれかに助けられながら、愛情を注がれながら生きています。
たとえこれから先、どのような定めが私たちを待っていようとも、幸せになるためにこの世に生を授かったというこの事実と私たちが離れることがないように、繋ぎとめるお守りのようなものが常に私たちの心の中から消えてなくなりませんように。
そう思います。
マウンテンペニロイヤル(FESフラワーエッセンス)
無意識に他人の思考やネガティブなエネルギーを吸収してしまう傾向がある人を助けてくれるエッセンスです。
ネガティブなものを浄化し、ポジティブな思考力が持てるようになります。*2
チャパラル(FESフラワーエッセンス)
暴力的なイメージの影響や感情の残骸や体に蓄積された薬剤など、魂がため込んだ「汚れ」をパワフルに浄化してくれるエッセンスです。
暴力的なシーンが心に印象付けられてしまったり、実際に暴力の現場を目撃してしまった子供たちを助ける効果があります。*3
参考:
*1 Instagram: @maeyoshikawa
*2 2009年 株式会社BABジャパン出版局 パトリシア・カミンスキ、リチャード・キャッツ『フラワーエッセンス・レパートリー』401ページ
*3 2009年 株式会社BABジャパン出版局 パトリシア・カミンスキ、リチャード・キャッツ『フラワーエッセンス・レパートリー』372ページ